我が国の一般的な住宅の気密・断熱性能は、実は先進国中で最低の水準です。

我々日本人の多くは、我が国は省エネ先進国だと思っています。ところが、実は諸外国からはそうは見られていません。例えば2017年には、ドイツ・ボンの気候変動枠組み条約第二十三回締約国会議(COP23)会場で、世界の環境保護団体で組織する「気候行動ネットワーク」から、日本は地球温暖化対策の前進を妨げている国を指す「化石賞」※1を受賞してしまっています。諸外国からは、省エネや省CO2への取り組みが遅れている国であると、非常に厳しい目で見られているのです。

とりわけ取り組みが遅れているのが、住宅・建築分野です。日本もパリで開催された第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において、採択されたパリ協定を採択していることは多くの方がご存知だと思います。日本は、パリ協定の枠組みを受けて、2030年までに2013年比で、温室効果ガス排出量を26%削減することを国際的に約束しています。ここで注目したいのが、日本の約束草案※2の部門別の削減目標です。産業部門の6.5%削減、運輸部門の27.6%削減に対して、オフィスビル等の非住宅建築を指す業務その他部門が39.9%削減、住宅における省CO2を指す家庭部門が39.3%と、住宅・建築部門が突出して大きな削減率になっています。これは政府が、住宅・建築物の分野の省エネ・省CO2への取り組みが遅れており、削減の余地が大きいと考えていることを示していると言えます。地球温暖化対策の取り組みは大切なことですが、ここでは「各家庭で積極的に省CO2に取り組みましょう!」と声高に訴えたいわけではありません。ただ、これから住まいづくりを進めようとしている方々に、日本の新築住宅の性能水準が他の先進国に比べて大幅に劣っており、エネルギーコストの問題だけでなく、私たちの多くは、健康、快適性、QOL(Quality of Life)も損なう環境に住んでいることを認識していただきたいと思っています。

実際、日本の住宅の省エネ性能や断熱・気密性能の水準は、先進国の中で最低の水準にとどまっています。そのため一般的な日本の住宅は、欧米の住宅に比べて、余計なエネルギーコストがかかる上に、冬は寒く、夏は暑く、さらにはヒートショックやアレルギー・喘息の発症リスクが高く、快適性も著しく劣る性能なのです。

住まいづくりを始めるにあたり、まず、日本の標準的な住宅の性能は国際的な水準と比較して、とても見劣りしていることをきちんと認識し、日本の住宅の常識は世界の非常識であることを意識すると、住まいの選び方の基準が大きく変わります。後悔のない、満足度の高いすまいづくりのために、この連載コラムにぜひ一通り目を通していただきたいと思います。

(2)ほとんどの先進国では省エネ基準への適合が義務化されていますが、我が国には適合義務がありません。

欧米などのほとんどの先進国には、住宅の省エネ基準や断熱性能の基準等が定められています。表に整理したように、米国や欧州の国々では、省エネ基準に適合していないと戸建住宅も新築することができません。また、お隣の韓国では、500㎡以上の住宅建築物の新築等には、やはり省エネ基準への適合義務が課されています。日本でも、省エネ基準は定められています。また、2,000㎡以上の非住宅建築物への省エネ基準への適合義務が2017年からやっと始まっています。
ところが、現時点では住宅への省エネ基準適合義務はありません。(2020年までに段階的に義務化してくことが閣議決定※3されています。)

(3)消費者が気を付けないと省エネ基準に満たない住宅の可能性も高いのです。

省エネ基準適合義務がないため、国土交通省の公表資料※4によると、マンション等の共同住宅の省エネ基準適合率は、図のとおりです。直近でも、新築住宅の約半分は省エネ基準に適合していません。また平成27年度の新築戸建住宅の外皮基準(断熱性能)への適合率は、58%※5にとどまっています。断熱性能の低い住宅がいまだに大量に供給され続けられているのが現状なのです。
つまり家を建てる際には、建築主(消費者)がよほど意識しなければ、気づかないうちに省エネ基準に満たない低い性能の家になっている可能性も高いので注意が必要です。

(4)日本の省エネ基準は、先進国の中でもっとも緩い基準にとどまっています。

我が国の住宅には省エネ基準への適合義務がない上に、実は、その基準が先進国の中でもっとも緩い水準にとどまっています。例えば、住宅の断熱性能を決める最も重要な要素である開口部(窓)の断熱基準は、横浜等の気候区分のエリアでは、U値が4.65W/㎡・Kになっています。U値とは、熱の通しやすさ(熱還流率)を示す値で、この値が小さいほど断熱性が高いことを意味しています。

また、一般社団法人日本サッシ協会等が定める窓の断熱性能表示制度※6では、熱還流率が4.65以下の性能が☆1つ、最高等級の☆4つは2.33以下と定められています。

それに対して欧米や中国などでは、例えばドイツでは1.3以下と定められているなど、下図のように概ね2.0以下が基準※7になっています。つまり我が国で最高等級が得られる2.33レベルのサッシは、他の国に行くと基準を満たしておらず性能が低いとみなされて使用することができません。それくらい我が国の省エネ基準は緩い水準にとどまっています。

ちなみに、日本の既存住宅の多くは、アルミの枠に単板ガラス(一重ガラス)のサッシですが、この窓のU値は6.5という非常に低い性能になります。冬に暖房が必要な先進国で、このような低性能なサッシの販売が許されている国は、日本以外にはあまりありません。

まず、世界の基準に照らして、日本の住宅の性能水準の低さをきちんと認識することが満足いく家づくりには重要です。現在の日本の住宅の一般的な性能を前提に住まいづくりを行うと、後々、性能不足により後悔することになる可能性が高いのです。

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