家の省エネ性能を考える上では、まず躯体性能を高めましょう。

さて、いきなり質問です。
ここに、穴の開いたバケツに水が注がれています。バケツの水位を上げたいのですが、あなたはどうしますか?

ほとんどの方は、バケツの穴を塞ぐと答えたのではないでしょうか?

住宅も同じです。暖房や冷房した熱を逃がさないような住まいにすることが大切です。バケツの穴に該当するのが、住宅の場合、断熱・気密性能や日射遮蔽・日射取得性能などの躯体の性能にあたります。

せっかく暖房や冷房しても、断熱・気密性能が低い住宅は、バケツの穴から水が流れ出ているように、大切な熱を無駄にしてしまっています。また夏に日射を遮蔽できずに家の中に取り込んでしまい、冷房負荷が大きくなってしまうことや、冬に日射を積極的に取り込むことができない住宅も同様です。

一方、蛇口をさらに開いてもっと水を注ぐのは、例えば太陽光発電で創エネすることにあたります。もちろん省エネや省CO2という観点から見れば有効な手段ではあります。でも予算が限られているのであれば、優先順位を考えることが大切です。まずは、バケツの穴を塞ぐことから考えましょう。

(2) ①躯体性能向上、②設備の省エネ性能向上、③太陽光発電等の導入、この順番が大切です。

住宅の省エネ性能を向上させるのには、大きく分けると、①躯体性能の向上(断熱・気密性能、日射遮蔽・日射取得)、②設備の省エネ性能向上、③再生可能エネルギー(太陽光発電、太陽熱温水器等)の大きく3つの方法があります。ではなぜ、バケツの穴を塞ぐこと、すなわち断熱・気密性能や日射遮蔽・日射取得性能の向上の優先順位が高いのでしょうか?

躯体の耐用年数は、一般的には30年程度ですが、耐久性の高い住宅ならば、60年、さらに100年以上持つ場合もあります。断熱・気密性能や日射遮蔽・日射取得性能も基本的には耐用年数の間、その性能を維持します。それに対して設備は早ければ10年程度で更新が必要になってしまいます。

例えば、住宅の省エネ性能を向上させるために、追加の予算が100万円あったとして、その費用を躯体に割くべきなのか、設備に割くべきなのか、耐用年数を考えればその答えは明らかです。さらに断熱・気密性能を後からリフォームして向上させようとすると、新築時のコストアップ額の何倍もの費用が掛かります。それに対して、エコキュートや太陽光パネル等の設備を後からつける工事はそれほど大変ではありません。その上、これらの設備は年々価格が安くなっています。新築時よりも、後からつける方がむしろ安く済むケースもあるくらいです。

その上、別のコラムで詳しく触れますが、躯体性能は居住者の健康や快適性の向上にも寄与します。ですから、まず躯体性能の向上を最優先にして、新築時に高気密・高断熱の性能を確保することが大切なのです。そして、まず省エネ対策をきちんとしてから創エネを考えるのが正しい順番です。そのため、住宅の省エネ性能を向上させるのには、①躯体性能の向上(断熱・気密性能、日射遮蔽・日射取得)、②設備の省エネ性能向上、③再生可能エネルギー(太陽光発電、太陽熱温水器等)のの順に優先順位をつけて導入の検討を行うべきなのです。

(3)躯体のなかでもとりわけ窓の性能向上が重要です。

右の写真は、日本で一般的に使用されているサッシとドイツの一般的なサッシの断面です。欧州ではトリプルガラスのサッシが一般的です。断面写真を見るだけで、性能の違いは一目瞭然です。日本のものづくりは進んでいるはずなのですが、残念ながらなぜか窓については、日本のマーケットにおいては先進国の中で最も低い性能のものが主流を占めてしまっています。

日本の窓の性能が劣っているのは、米国や欧州諸国に比べてだけではありません。一般社団法人日本サッシ協会等が定めるラベリング制度※1の最高等級がU値2.33 W/㎡・K以下、横浜等のエリアの省エネ基準が4.65、アルミの枠に単板ガラス(一重ガラス)のサッシが6.5ということは、前回のコラムで触れました。(U値は値が小さいほど断熱性能が高い)

それに対して、韓国の窓の要求性能は、ソウルが位置する北側の地域の集合住宅の基準が1.2、戸建住宅が1.5、プサンが位置する南側の地域でも集合住宅が1.4、戸建住宅が1.8となっています。日本の省エネ基準はおろか、日本の最高等級の窓よりも要求水準が高くなっています。
また、中国の基準も、寒い大連や北京はもちろんのこと、比較的暖かい上海の地域ですら2.0~2.2レベルが要求されています。

では、なぜ世界各国はこれほど窓の断熱性能向上にとりくんでいるのでしょうか?

住宅で生じる熱の損失を壁、屋根、開口部(窓)等で比較すると、窓から最も多くの熱が逃げています。特に、日本の住宅の窓の性能が低いため、冬は約52%、夏は約74%ものエネルギーが窓から失われています※3。また、アルミは樹脂や木の約1,000倍もの熱を通すため、日本以外の先進国でアルミサッシを積極的に使用している国※2はなくなっていることも知っておきたい事実です。ちなみに米国では、50州のうち24州でアルミサッシの使用が禁止されているそうです。

世界の素材別サッシ普及割合

各国で窓の断熱性能向上が図られているのは、省エネや省CO2という観点からだけではありません。欧米では、結露が居住者の健康に悪いことが一般的に知られています。そのため、欧米の多くの国では、結露が生じるのは誤った設計であり、結露が生じると瑕疵になってしまいます。つまり結露が生じるのは設計ミスもしくは施工ミスなので、施工者は直さなければならないのです。
結露が起きることが前提になっている我が国の窓とはかなり異なる点です。ただし、日本でも住まい手に住宅の不満について聞いたアンケートで、結露が不満の上位に入っていることは、家を建てる際には意識しておきたい点です。

窓の性能を高めることは、住宅の省エネ性能を高める施策の中でも費用対効果が高く、快適性や健康への影響にも大きいことから、最優先で検討したいものです。

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